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審決


無効2003−35013
大阪府大阪市中央区北浜4丁目7番28号
 請求人
住友林業 株式会社
 
東京都港区赤坂1丁目8番6号 赤坂HKNビル6階 羽鳥国際特許事務所
 代理人弁理士
羽鳥 修
東京都杉並区高井戸東2丁目4番5号
 被請求人
ミサワホーム 株式会社
 
東京都千代田区岩本町1−11−10 三鈴第一ビル4階
 代理人弁理士
土井 清暢


 
 
 上記当事者間の特許第2549242号発明「蔵型収納付き建物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。



 結 論
 
 訂正を認める。
 特許第2549242号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。
 審判費用は、被請求人の負担とする。



 理 由
 
(一)手続の経緯
1)出願 (特願平5−117123号)   平成5年5月19日
2)登録 (特許第2549242号)    平成8年8月8日
3)無効審判請求              平成15年1月20日
4)答弁書、訂正請求書           平成15年4月4日
5)弁駁書                 平成15年6月20日
6)口頭審理陳述要領書(被請求人)     平成15年7月10日
7)口頭審理(特許庁審判廷)        平成15年7月10日
8)上申書(請求人)            平成15年7月24日  
 
(二)本件特許発明について
1.訂正について
(1)訂正請求の内容
 平成15年4月4日付けの訂正請求は、特許第2549242号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正するものであり、その訂正の内容は、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正するものである。
 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1を削除し、特許請求の範囲を次のように訂正する。
「【請求項1】 階数が3階の建物であって、2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、該蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にし、該蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設け、該蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けたことを特徴とする蔵型収納付き建物。
【請求項2】 前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを特徴とする請求項1記載の蔵型収納付き建物。
【請求項3】 前記蔵型収納室は防湿構造であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の蔵型収納付き建物。」
 訂正事項b:明細書の段落【0007】を「また前記蔵型収納付き建物において、前記蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にした。さらに、前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを望ましいし、また防湿構造であることが望ましい。」に訂正する。
 訂正事項c:明細書の段落【0009】を「またこの蔵型収納付き建物において、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。さらに、前記蔵型収納室の主要構造は防火構造であり、また防湿構造であるので蔵としての機能が高まる。」に訂正する。
 訂正事項d:明細書の段落【0032】を「請求項1に記載の発明に係る蔵型収納付き建物によれば、3階建ての建物の2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設けるようにしたので、大きな収納空間を得ることができるとともに、この蔵型収納階の空間を有効に利用して蔵型収納室のレイアウトに変化をつけることができる。また、例えば蔵型収納階のフロアーの大部分を大きな収納空間とすれば、効率的に家具等を収納することができる収納空間を備えた蔵型収納付きの建物を提供することができる。また、前記蔵型収納階がそれを挟む上下の階における防音、防震の効果を発揮することができる。さらに、前記蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊場に面して蔵型収納室に出入りできる出入り口を設けるようにしたので、物品の搬入、搬出を円滑に行えるようになり、蔵型収納付き建物の機能を高めることができる。また、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。また、請求項2および3にそれぞれ記載の蔵型収納付き建物においては前記蔵型収納室の主要構造部を防火構造にしたり、防湿構造にしているので、蔵としての機能を高めることができる。」に訂正する。
(2)訂正の適否について
 上記訂正事項aないしdに係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項bないしdに係る訂正は、訂正事項aに係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明りょうでない記載の釈明および誤記の訂正を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
 したがって、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書並びに同法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
 
2.本件特許発明
 上記のように訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものである。(上記(二)1.(1)訂正事項a参照。)
 
(三)請求人の主張および提出した証拠方法
 請求人は、「特許第2549242号発明の明細書の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求するとともに、証拠方法として甲第1号証(実願昭63−157505号(実開平2−77242号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(「別冊・都市住宅 1975冬 住宅第8集」 鹿島研究所出版会 昭和49年12月15日 p.2,58〜62,160,169,172)、甲第2号証の2(「別冊・都市住宅 1975冬 住宅第8集」のp.62の図面に、断面線等の記載を記入したもの)を提出し、請求の理由として、平成15年6月20日付け弁駁書において、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第123条第1項の規定により無効とされるべきであると主張し、参考資料1ないし4を提出し、平成15年7月24日付け上申書とともに、参考資料5を提出している。
 
(四)被請求人の主張
 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
 そして、平成15年4月4日付け答弁書および口頭審理陳述要領書において、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許は、無効とされるべきものではないと主張している。
 
(五)当審の判断
1.証拠に記載された発明の認定
 甲第1号証(実願昭63−157505号(実開平2−77242号)のマイクロフィルム)には、実用新案登録請求の範囲に「1.木造独立住宅において、水回り関係諸室をまとめ、その天井高を、居室よりも低くして、南面する居室などの天井を高く構成し、上記水回り関係諸室の上方を利用して、1〜2階の中間に多目的スペースを組み込んだことを特徴とする住宅。」、6頁5〜15行に「水回り関係諸室を北側にまとめて、それらの天井を低めに抑えることにより、上部に生れた余裕の高さ(北)と南面居間を高い天井にするために上積みされた高さ(南)とを組合せることにより、1〜2階の北側中間部に、頭のぶつからない程度のスパースが生れる。それは、上下階の中間に位置し、どの階からも近く(階段の踊り場を利用して)、物の出し入れも比較的容易で、通風、採光も可能な乾燥した収納スペースとなる。」、8頁5行〜9頁10行に「1は南面する居間、2は北側の台所、3は北側のユーティリティ(浴室・便所・洗面洗濯場)、4は1〜2階の中間に位置する多目的スペースで、上記北側の台所2とユーティリティ3の上方に配設されている。5は階段踊り場より上記多目的スペース4への出入り動線、・・・上記南面する居間1は、天井を高くして開放感を与え、南面高窓7を取付けて北側にまで直射を導入させるように構成されている。図中、12は玄関、13は玄関ホール、14は納戸、15は便所、16は洗面洗濯場、17は浴室である。上記北側の台所2とユーティリティ3は、天井高さを低めに抑えて、上部に余裕の空間を生み出すよう構成されている。・・・18は例えば子供室(洋間)、19は例えば書斎、20は例えば寝室である。」と記載されており、階段踊り場より出入り(物の出し入れ)できるということは、階段の踊り場に面して出入り口を設けてあるはずであり、また、第1,2図をみると、1階の台所2とユーティリティ3の上方および玄関12玄関ホール13納戸14の上方に、階段の踊り場を挟んで区画された2つの多目的スペース4が、記載されている。これらの記載および図面を参照すると、甲第1号証には、「1〜2階の中間に頭のぶつからない程度の天井高の多目的スペースを組み込み、多目的スペースに至る階段を設け、階段の踊り場に面して出入り口を設けた多目的スペースを組み込んだ住宅」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
 
2.本件特許発明と証拠に記載された発明との対比・判断
(1)本件特許発明1について 
 本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「多目的スペース」は収納スペースとなることが記載されている(6頁15行)から、本件特許発明1の「蔵型収納室」に相当し、また、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ住宅」は、本件特許発明1の「蔵型収納付き建物」に相当し、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ1〜2階の中間」と、本件特許発明1の「蔵型収納階とした2階」とは、「中間層」で共通するから、両者は、中間層を区画して蔵型収納室を設け、中間層に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けた蔵型収納付き建物の点で一致し、下記の点で相違している。
相違点1:本件特許発明1は、階数が3階の建物であって、中間層が2階であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、中間層が1〜2階の中間と記載されている点。
相違点2:蔵型収納階の天井高さを、本件特許発明1では、1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたのに対し、甲第1号証記載の発明では、頭のぶつからない程度にした点。
 上記相違点1について検討する。
 被請求人も成立を認めた参考資料1(「建築大辞典第2版<普及版>」株式会社彰国社p.232)によると、「階」とは「(1)床によって区切られる内部空間の層。(2)建築物の層を数えるのにいう。」と定義されており、また、「床」とは、「空間を水平方向に仕切る建物の部位で、人間や物がその上に乗ったり置かれたりする。」(「建築大辞典<縮刷版>」株式会社彰国社 昭和59年2月10日発行 p.1556)、「天井・壁とともに建物内部空間を構成する普通水平な底。」(「建築用語辞典」株式会社技報堂 昭和48年6月25日発行 p.1039)と定義されている。そして、当業者の技術常識からみても、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ住宅」は、階数が3階の建物であって、多目的スペースを組み込んだ1〜2階の中間である中間層は2階であるということもできる。となると、上記相違点1は、表現が異なるだけで、実質的には相違していないことになる。
 つぎに、相違点2について検討する。
 天井高さとして、1.2メートル以上、2.0メートル以下という数字は通常居室の天井高さより低いといえるが、甲第1号証記載の発明でも、頭のぶつからない程度にしており、どの程度の天井高さにするかは、設計的事項に過ぎない。
(2)本件特許発明2について
 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに、「前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造である」と限定しているが、上記(1)本件特許発明1についての検討事項に加えて、蔵型収納室の主要構造部を防火構造とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項に過ぎない。
(3)本件特許発明3について
 本件特許発明3は、本件特許発明1〜2のいずれかを引用し、さらに、「前記蔵型収納室は防湿構造である」と限定しているが、上記(1)本件特許発明1について、および、(2)本件特許発明2についての検討事項に加えて、蔵型収納室を防湿構造とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項に過ぎない。
 
3.むすび
 したがって、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により、これを無効にすべきものである。  
 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
 よって、結論のとおり審決する。


        平成15年 8月25日

     審判長  特許庁審判官 鈴木 憲子
          特許庁審判官 長島 和子
          特許庁審判官 田中 弘満
〔審決分類〕P1112.121−ZA (E04H)
 審判長   特許庁審判官
鈴木 憲子
7014
       特許庁審判官
田中 弘満
7347
       特許庁審判官
長島 和子
7806


上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 平成15年 8月25日   審判書記官
山本 克彦